ともみ@ピクニック

五.カフカと頭木さん

この評伝には、(言語隠蔽の論からすると
これまた限界があることだけど)

カフカのむき出しの感情が惜しみなくあらわれており
わたしは、しばしば息を漏らして笑ってしまった。

(本を読んで笑うなんて、我には稀少な体験)

人間の矛盾があふれていて
(かなしみ、こっけい、ごうまん、小心 etc )
ほんと、いとおしい。

(もちろん、そんな矛盾だけ見せられても
なんの魅力もないわけで、それとつながる
でも反対のベクトルにあるような人間性が
あってこその、いとおしさ)



ここまで味わい深い読み物になっているのは
素材の力はもちろん、著者の頭木さんの
筆力も大きいはずだ。

この方、描写が旨いんだよね。

例えば

「たきびに水がかけられました」(140頁)
(↑処女本を出したのに恋人から感想をもらえないカフカ。
これまで恋愛を燃料に執筆に励んでいた彼は、これを機に
また書けなくなるというときの表現)

カフカを、「手紙の吸血鬼」(174頁)とたとえ
「吸血鬼が急に血を吸わなくなるくらい、ありえない」(172頁)
「悩みが、もはや怪物化」(172頁)と、さらっと描写したり。

(現場中継のレポーターのよう!)

突き放しているようでいて
的を得ているんだよな~。

また著者は「カフカのプロフィール」の項で
「カフカは現代に通じるところがとてもあります。
現代人としか思えないほどです」と述べているのだが

随所、カフカのいた世界と、われわれ現代人の世界の
橋渡しをするような文章をいれており
(学者的な文章じゃなくて、生身の言葉というのかな
著者自身の心をフィルターにして書いているのだろうなぁ
と思わされる)、それもいいんだよな。

カフカを通して、この本の作者にも興味がわいた。

PageTop
 

コメントコメント


管理者にだけ表示を許可する