ともみ@ピクニック

オリザさんの見る「地方」

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『下り坂をそろそろと下りる』(平田オリザ・著)

いけいけ! どんどん! の、上りだけが
すばらしいわけじゃ、当然なくて

そろそろと下っていく社会もすばらしい。

そのためのヒントが書かれてる本。

           *

島内だけの暮らしなら、今のままで十分に
魅力的な子が育つけれど、やがて島外に出ざる
をえない子らのために、コミュニケーション能力を
育む教育を惜しまない、四国の離島。

I ターンの増えている、小豆島。
(内澤姉さまもそのお一人だな)

アーティストの滞在製作に全面協力し、今や
世界じゅうの芸術家の憧れの地となりつつある
城崎(きのさき)温泉。

ここには野茂秀雄さんのベースボールクラブもある。

わたしは全然知らなかったが、城崎温泉は
世界的な小都市となっているらしい。

などの話が印象に残った。

(他、これからの時代にあった大学づくりとか
東北の復興取り組みとか、韓国の話などなど
著者の実体験をもとにしたエピソードは多岐にわたる)

かつての高度経済成長とは全く違うベクトルで
じわじわと、成熟している地方があるのだなぁ。

           *

ところで、地方在住者は

「地方には豊かな自然があり、それに育まれる感性もある」
という自負(神話?)に支えられている面がある。

(そういえば、地方局のテレビって、自画自賛がすごいの。
びっくりするくらい井の中の蛙であったりするのだ。
そしてそれに慣れた者は、ますます自負を強め合う?)

著者のオリザさんは自然の豊かさの効能につき
「一理あると思うし、そうであって欲しいとも願う」
としたうえで

自然の豊かさだけで地方の弱点は補えないと
文化の地域間格差をあげる。

「文化資本の格差は発見されにくい」
「地域間格差と経済格差。この二つの方向に引っ張られて、
身体的文化資本の格差が加速度的に、社会全体に広がっていく」

そうだよねー。

           *

多様性の少なさ、文化芸術に触れる機会の少なさ
人との出会いの少なさ、そういう厳しい指摘は
地方の当事者はほとんどしてこなかったと思う。

すばらしい自然、おいしい食事! に代表される、地方の
(特に田舎の)良さをあげて、ご当地自慢をしてきたけれど

この日本では、ちゃんと目を開いて見てみれば
どの都道府県に行ったって、豊かな自然、おいしい食材があり
温泉もあり、行くところにいけば人情がころがっている。

それを、どこにも負けないすばらしい財産として
それだけでやっていこう(地方活性を狙おう)というのは
ほんとうは無理があるのだよねー。

(いや、実際にすばらしいのだが、皆がみな
すばらしいのだから、それだけを楯にするのは難しい。

だから自然の豊かさにしがみついているだけでは
どんどんと地方が衰退していくのだよねー)

また地方の在住者が、地方の衰退を語るとき
「雇用の少なさ」のせいにしがちだけど

オリザさんは
「そうじゃなく、地方自身に魅力がないからでしょ?」
と、地方在住者がなかなか直視しようとしない
厳しいコトもおっしゃっている。

(特に、地方議員や知事がそれを認めてしまえば
有権者に“あなたたちはつまらない土地に住んでいるのです”
ということになり、そこには触れられないでいる)

そこに気づき、メスを入れた地方が
円熟の時代に向かっているようだ。

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