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真の犯人は「肥大した自尊感情」

新幹線の焼身自殺についての補足。

事件の前に、車内にいた赤の他人に
「お金をあげる」とか「タバコをあげる」
さらには「逃げなさい」などと
ご当人が言っていたという報道に触れ

ああ、この人は、人の優しさに飢えていたのかなぁ
と、ぼんやり思った。

わたしはこの事件について
テレビのワイドショーやネットの情報をほとんど
見聞きしておらず、主にラジオで聞いた浅い情報しか
ないのだけれど

人生にヤケになってしまった
(先にも書いたが、「現状から逃れるためには
さらにヒドイ状況を自ら作るしかない」という
まったくオカシなロジックに取り付かれたのだろう)

寂しさのあまり、「自分が主人公になれる」ことをしたかった
(過度に累積した人情方面の飢えがあったため
「社会から怨まれる存在になる」ことを恐れなくなっていた)

のかなぁ、とも思う。

でも、みんながみな、人生にヤケになったからといって
寂しいからといって、あんな事件を起こすわけじゃない。

苦しくても、それを抱えて「まっとう」に生きている人が大半のなか
なぜ、あんな事件を起こす人がいるのだろう?

内田樹さんは、『呪いの時代』という本のなかで
2008年に起きた秋葉原の無差別殺傷事件について
労働環境や絆の喪失、そういったものが動機であると
犯人が自らネットに書き込んでいるし、メディアも精神科医たちも
そのような説明を受け入れていたが
ほんとうにそうなのだろうか?と問題提起している。

そして、それに続く内田節を読んでいると
今回の新幹線焼身事件の犯人にもピタリと当てはまるなぁ
と思わされた。

彼と同じような労働環境で、同じような家庭環境で、同じような孤独の
うちにいる青年は現在の日本には数十万、数百万単位で存在します。
でも、その全員が無差別殺傷事件を起こすわけではありません。
ということは、犯行を動機づけたのは「現実の苦しみ」そのものではないと
いうことになります。

現実ではなく、彼が自分の現実に与えた解釈が犯行を正当化したのです。
「私は殺人者になるべきである、なる資格がある」という判断に彼が達したのは、
その判断を基礎づけるものが「事実」レベルにあったからではありません。
問題は「解釈」レベルに存する。

極端な話ですが、ほんとうに彼が現実の待遇や生活に不満であったのなら、
彼は職場の上司を刺し、職場近くで彼が具体的に見て、その生き方を
羨望している生活者たちを襲ってもよかったはずです(よくないですけど)。

けれども、彼はそうしなかった。
それはこの殺人の主体が現実の人間ではないからです。

殺人の犯人は彼が「ほんとうの私」だと思っている肥大した自尊感情そのものです。
もっと尊敬されるべきであり、もっと厚遇されるべきであり、もっと愛されるべきである
と思っている「私」が、その「当然私に向けられるべき敬意や愛情や配慮」の不足に対して
報復した。


(内田樹著『呪いの時代』27~28ページより引用。
改行は私の判断で適当にしてあります。原本の
傍点を太字に、改行を一行開けに直してあります)

うーん。

わたしは、こういう事件について、ついつい貧困だとか孤独だとか
短絡的な意味づけをしてしまうけれど
それって表層的な、「理解しやすい」物語へのすり替えなのかも。

今回の新幹線焼身事件は
「自分」に対する、ねじれた解釈から始まっている。

真の犯人は、肥大した自尊感情か。

これが答えなのかも。


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はじめまして

ちょこちょこ訪問させていただいています

この事件を聞いて、同じような印象を受けました

お金の貧困の要素は少なからずあるはずですが
心の貧困こそが契機になったと思うんですよね

「理解しやすい」物語へのすり替え
うんうん、これ ありますよね

報道とかもそんな感じだし、著名人の記事もそんなものが多いし
わかりやすいから、人気も出るんだと思うんだけど

そんなに単純なことだとは思えないです

消費しないピノキオさん

はじめましてe-257
コメントありがとうござます。

そうですよね、お金がもっとあれば
彼はこんな事件を起こさなかったかもしれないけれど
だからといって、「お金」が事件の原因ではないわけで。

識者も一般人も(もちろんわたしも)
「理解しやすい」物語にして、安心したいのかもしれないな
と、頂いたコメントを読み、思いました。
背伸びせず、ゆるゆると日常生活などをつづります

はえともみ

Author:はえともみ
ちちんぷいぷい~。
(HSPの自覚あり)
「うつと仲良く! ひきこもりだっていいじゃない」と
開き直って生きてたら
元気になってきました。

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