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『A3』も、ぱらぱら読んだ。これはオウムの教祖である麻原をテーマにした本。

わたしは(「これは本能的な感覚なのでどうしようもない)、麻原を、最初っから「生理的に受け付けない」というか、イメージが加って余計そう思うのか、容姿を見るだけで「きもちわるい」と嫌悪してしまい、彼に関してはあれこれ考えるのもはばかられる。かの教義というものを目で追うことすら拒絶反応があるし(おまけに外国語まじりだと尚更)、裁判というものにそもそも興味がない。そんなわけではあるが(つまりは全部をがっちり読んでいない)、ぱらぱら読みした感想を少し書いておこう。

へぇ~と思ったことなど、いくつか印象に残ることを挙げてみる。
(頁数のあるものは『A3』からの引用)

◎彼と接触したい(電話で話す、会う口実が欲しい)がために、幹部信者たちは「オウムが追い詰められている」話をでっちあげていった。(そこまで他人を魅了するとは「洗脳」の二文字ではあらわせない魅力もたしかに彼にはあったのかもしれない)。

→465~466頁
結果的に弟子の暴走が容認された背景には、弟子たちから報告された情報で麻原の危機意識が刺激されていたからだ。(略)萌芽した危機意識に、弟子たちによってたっぷりと水や養分が与えられたとの見方もできる。(略)。多くの幹部信者たちが競いながら、危機意識を煽るような報告を麻原に伝えていた。その多くは虚偽であり、不確かであり、被害妄想的な情報だった。

→466~467頁
実現不可能な世迷いごとに思えても、あるいは現世の法を犯す指示ではあっても、これはマハームドラーなのだと整合化してしまう弟子たちの心理メカニズム(これは洗脳とは違う)。そして最終解脱者であると宣言したゆえに、弟子たちから報告された情報の判断や確認ができなくなるという自己呪縛。錯綜するこれらの要素を背景にしながら、麻原の内面を慮る側近たちの「過剰な忖度」が発動する。こうして麻原が喜びそうな報告を無自覚に捏造してしまうという意識状態に、多くの側近たちがいつのまにか嵌っていった。

麻原の情報は幹部信者のもたらすものが全てだった。

そして最終解脱者という立場の自己呪縛。

彼と幹部信者は、互いに操り操られ、であったのか。

わたしにとっては目からうろこである。てっきり「麻原が幹部信者たちを手玉にとっていた」と思いこんでいた。この構図しかないものと思っていた。

◎神秘現象の体験者で彼があることはホントかもしれない。(だからといってもちろん彼の責任が軽減されるものではない)。

◎ある時点から、彼は完全に壊れてしまった。すでにオウム時代に壊れ始めていた可能性もあるわけだが、本書を読むかぎり、拘置所のなかで彼は、人間としての一線を超えて(良心的な一線はとうに超えているとして、ここでは動物としての人間の一線をも超えて)しまったというか、完全にがっつり壊れてしまったようだ。重度の拘禁精神病にかかったともとれるが、ともすれば拘留中に薬物などにより「壊されてしまった」との見方も大いにありうる。

この「完全に壊れてしまった」具体的な内容を書くのも気がめいるので止めておく。本書全般にその壊れっぷりというか異常さが示唆されているが、特に彼の身の回りの世話をしていたという衛生夫(受刑者)のインタビュー記事の引用は、この世のものとも思えないくらいおぞましい。ひとことでいえば、彼が動物以下の存在になっていることがありありと分かるのだ。(ちなみに、この引用記事によると、衛生夫は刑務官に、麻原に出すお茶のなかに白い粉をまぜるよう指示されたこともあるそうだ。「睡眠薬だとか言っていたように思います」とのことだが、真相は分からない。また衛生夫の語る“噂”をもとにすれば、麻原は拘置所内で意図的に壊されたという推測だって、容易にできる。←ははっ、上記と重複だな)。

但し、「人の意識の内側は覗けない」として、著者の森さんは、麻原が詐病ではないと100%言い切ることはできないと書いてはいる。その論でいけば、「完全に壊れている」発言は、本を読んだ限りのわたしの主観で、大胆な憶測にすぎないことを、念のために記しておこう。

1997年から本書の書かれている2004年時まで、麻原は誰とも口をきいていない(家族とも弁護士とも)という。きっと、今、この2012年に至るまで、その状況は変わっていないのだろう。「もしもこれが演技でできるのなら、その精神力の強靭さは並ではない。まさしく怪物としか思えない」と森さんも書いているが、同感である。

◎と、素人のわたしですら判断できる彼の異常事態を、「詐病」である、と判断する権威者の方々は、まったくもってイカレているとしか言いようがない。ここに腐った検察サイドおよびそれに絡む社会の素顔をどうして見ないでいられよう。ともかく社会は彼を一刻も早く葬りたいのだな。

→407頁
この記事の中で岩上は、九六年の三月までに警視庁は捜査を打ち切る方針であるとの情報を前提に、「オウムのやろうとしていたことの全容を解明しようとすると、政界や、他の宗教団体や、闇社会や、第三国との関わりにまで踏み込まざるをえなくなる。現場の捜査にたずさわる者とすれば、そうしたタブーには触れたくない。できるならば、見なかった、聞かなかった、知らなかったことにしてしまいたい」と捜査関係者が語ったと記述している。

この記事とは『宝島30』(1995年12月号)のなかで岩上安身さんの書いた記事である。

地下鉄サリン事件が起きたのは1995年だから、上の情報が確かならば、わずか1年で警視庁は事件の捜査を終えてしまおうとしていたわけである。

そして、話は飛ぶけれど、麻原に対しては、2004年に東京地裁で死刑判決が下され、2010年には最高裁が特別抗告を棄却。本来ならばもっと時間をかけて進められるべきらしい麻原の死刑確定。

この幕引きの早さには、捜査と同様、もろもろのタブーを隠すためという面もあったようだ。

(タブーの一例 → 警察がサリン事件を「見逃した」だけでなく「誘発した」という見方)

オウム捜査で、おのず出てくる数々のタブー。そして裁判で真相を探ろうとすれば、探る側も深みにはまるという仕組み。警察、検察、司法、その他もろもろの組織にとって「迷惑」な話なのだろう。

そしてまた「あんなやつは早く死刑にしろ」「とっととケリをつけろ」そんな社会の引力によっても、“後始末”は早められた。

(話はずれる。本事件に限らず、そもそも被害者側の感情を配慮して早々に結審するという最近の裁判の仕方ははたしていかがなものか?という思いはある。もちろん事務手続きをスピーディーにして「結果、そうなった」のならいいのだが、すべきことをせず、明らかにすべきことをふせ、結果ありきで早々に裁判を終わらせようということがもしも行われているのなら、???だな)。

◎まずは「彼の治療」を施すべし、という正論は却下された。この事実は日本の汚点になると、わたしは思う。

◎たいそう意外だったのは、信者でなくとも、彼の笑顔に魅了された人は多いらしいということ。


他にも「へぇ~」と思ったことはあるような気もするが、そろそろ書くのも疲れてきたので、この辺で止めておこう。


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ナイスまとめです。
弟子にとってのマハームドラーの呪縛という心理メカニズムは他の様々な宗教団体にも多いに起こりうる問題ですね。
弟子が麻原にでっち上げの報告をし続け、その結果、盲目の麻原の危機意識が爆発したという考え方には納得いきます。
麻原自身が神からのマハームドラーを意識していた(かもしれない)という事、神からというか、これは前述の弟子からのでっち上げの報告が原因となったということでしょうが、やはり既にこの頃麻原の精神は崩壊しはじめ、統合失調症を発症していたと考えるのが一番合点がつきます。被害妄想は統合失調症の症状のうち最たるものですし。

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はえともみ

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