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(『A』の続々編である『A3』に書いてあったのだったかな)、居場所を求めるオウム信者と住民の話し合いの過程では、両者が和んじゃう、って場面が多々見られたらしい。「オウムは危険」の一念で臨んだ住民が、実際に信者と会っってみると、その人柄に「危険」感が薄れてしまうらしいのだ。なかには「脱退したら、ウチの婿に来い」なんて話も出るほどらしい。実際のオウム信者の素顔を知れば、のほほ~んとしていて、誠実で、正直で、という人が多いのだろう。「信者一人ひとりはそうでも、団体となったら、怖いでしょ」という意見(意見というより、これは感情論だ)はあるだろうし、わたしのなかにもそういった意見(感情)はありそうな気もする。けれど、そんなことをいったらどこの組織もどこの世界も同じだよねー。

『A』のなかでは、まるで漫画のようなやりとり(オウムの日常)が所々見られるのだが、一例を写しておこう。

刑事と女性信者との応酬はしばらく続いたが、どこか憎めない刑事のキャラクターに、当初は目を吊り上げていた女性信者はいつのまにか笑いだしてしまい、勢いづいた刑事は、陳列棚に展示されている他の商品にも手を伸ばす。「もう、駄目だって言ってるのに」刑事が手にしたのはセットとして売られている上祐のプロマイドだった。「こんなの買うやつ本当にいるのかよ」「いますよ。ヒット商品なんですよ」「なあ、あんたどう思う?」横でカメラを回す僕に刑事が振り向いてそう訊ねる。(中略)ファインダーを覗きながら、僕は刑事に答える。「それは買わないけど、こちらのメモ帳なんか確かに安いですね」女性信者が嬉しそうに声をあげる。「そうですよねえ」「このトレーナーも、これでニ九○○円なら良心的ですよね」「お目が高いですね」「だってあんた、いくらモノは良くても、オウムのマークがプリントされたトレーナーは着れないよ」「いやあ、考え方でしょう」「だってさあ、子供の運動会にあんた着てゆけるかい?」『A』98~99頁

外部の者が想像する以上に、のほほ~んと、自由な空気が、オウム信者の生活にはあったようだ。

と、こんなことを書くと、「いやいや教団にはこれこれこんな規則があったんだ」という緩い話から、「教団内の殺害だって起こったじゃないか」とのシビアな話も(反動として)出てきそうだが、それはもちろんそうだよねー。わたしがいいたいのは、決して彼らの生活が人としての喜怒哀楽を忘れてしまったイカレタもの一辺倒であったのではなく、わたしたちの日常となんら変わらない「のほほ~ん」とした雰囲気ももっていたらしいということ。そして、随所に見られる彼らの誠実さ。無防備なほどの率直さ。ときに、社会という厳しさのなかにいる者たちからみたら(誤魔化したり取り繕ったりがややもすると普通となっている社会の一員からみたら)、彼ら信者は一見「?」とも思えるほどの無防備さらしい。

な~んて書いていると、いろいろ誤解も生まれそうなので、この辺にしておこう。

(寄り道話。それにしても、犬に修行テープを聞かせる…という発想が「ちょっとやっぱりとんでもない」とわたしなら思うし、けれど、実際にそんな“修行犬”がいて、そのことを苦笑して説明するオウム信者という存在も、なんだかすべてがコントのようにも思えてくる!)

そうそう、このブログの最初に「居場所を求めるオウム信者と住民」のことに少し触れたけれど、今このブログを書くために本をめくり返していたら、こんな話があったことも思い出したので写しておこう。

京都のあるマンションの住民の起した「オウム信者たちの退去」を求める訴訟。傍聴席がいつもは住民たちで埋め尽くされるために、ある日、オウム信者でいっぱいにしようと裁判所前に信者を招集した際の様子。(池田さんはオウム信者。会話の相手は傍聴に来た主婦。1997年のこと)。

「池田さんずっこいわあ。こんなんありやの?」
「いやあ、偶然増えちゃったんすよ」
「嘘言いな。あそこにいはるの荒木さんやん。計画的やわあ」
「本当っすよ、偶然なんすよ。でもいつもは皆さんでいっぱいなんだから、たまにはいいじゃないすか?」
「何言うてん。スーパーでも、特売の卵は一人一ケースまでゆうて決まりやん。こんなんずっこいわあ」
この軽妙なやりとりには信者と住人たちが大爆笑。出てゆけ、出てゆかないと、訴訟まで起している当事者同士の裁判所前でのそんな光景を、僕は奇妙な居心地の悪さを感じなら、カメラを片手に眺めている。
(中略)
公判の開始時間が迫り、結局はオウム側が折れ、住民たちも何人かは傍聴に加わる。
『A』203~204頁

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はえともみ

Author:はえともみ
 
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